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居住性能と環境性能の両立へ

居住性能と環境性能の両立へ

滋賀事業所工場棟・事務棟

静岡、九州、福島につづく第4の製造拠点として今年2008年3月に竣工した滋賀事業所。
静岡本社からの設備移管も順調にすすみ、いよいよ本格稼動が始まりました。

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    断面詳細図

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    断面詳細図

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    玄関上部のトップライトを見る。

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    アルミ屋根材上面を見る。

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    事務所内部。

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    鉄骨造の工場棟の南側にアルミ合金造の事務棟が配置されている。

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    ガラス貼りで開放的な事務棟。

 SUS滋賀事業所は、FA(ファクトリーオートメーション)向けのアルミ製フレームおよびアルミパネル、樹脂パネルの切断や加工、各種アクセサリーパーツのピッキング、製品組立などの工程を担う工場で、主に東海・関西・北陸地区に向け製品を供給していきます。2009年春には新名神高速道路甲南インターチェンジも開通する予定で、デリバリーの拠点としても期待が高まります。

工場棟と事務棟をわける

 この工場の大きな特徴は、工場棟と事務棟を機能的にも構造的にわけていることです。大きな空間が必要である工場棟にはスパンをとばすことのできる鉄骨造を、中小の空間を複数必要とする事務棟にはアルミ合金造を採用しました。これにより事務棟はガラス張りで開放感のある空間となり、工場棟との対比も明確になりました。
 工場棟のデザインは、昨年2007年12月、タイ・ランプーンに竣工したSUSタイランド新工場のイメージを踏襲しています。つまり側壁を妻面で斜めにカットし、浮遊感、躍動感を表現しています。外壁については、アルミとガルバリウム(アルミニウムと亜鉛の合金)を貼り分けることでSUSらしさを表現しました。
 内部空間については、これまでの製造拠点で培われたノウハウを十分に加味したことはもちろんのこと、今回初めて本格導入される自動倉庫システム、DPS(デジタル・ピッキング・システム)、AGV(自動搬送車)などをいかに合理的に配置するかを第一に考え、ボリュームが計画されました。

実験色の強いアルミ合金造の事務棟

 事務棟に採用されたallenシステムは、SUSが主にこれまで駐車場上部の店舗建築などに用いてきたシステムですが、従来と異なる設置型とし、面積もこれまでになく広いものとしています。しかし、特筆すべきは、住宅設計を意識した質の高い仕様といえるでしょう。
 そのひとつが今回新しく開発されたアルミ屋根材と瓦棒葺きのシステムです。見た目のみを考えるのであれば、ガラスのフラットルーフである方がすっきりとして工場棟との対比が強調されたかもしれません。しかし、居住性能を考えると断熱・防水性能の高い屋根材を用いることが必須となります。これまでSUSはオリジナルの屋根材をもっていませんでしたが、今後のアルミ住宅の普及を視野に入れ開発を進め、タイ・ランプーンの新工場で製作しました。屋根は、日本建築を特徴づける重要な部位です。

床も住宅仕様

 見た目だけではわからないかもしれませんが、床も一般的なつくり方とは違っています。コストの問題だけ考えれば、床下をつくらず、コンクリートをそのまま打ってしまえばよいのですが、ここでは高さ25㎝程度の床下空間を設け、その上に合板を敷き、タイルカーペットで仕上げています。ですから、事務所というより住宅の仕様に近いもので、このために足が疲れず、底冷えしない床になりました。
 このようなつくり方をした理由はふたつあります。ひとつは配線や配管のスペースとしての床下利用です。滋賀事業所の事務棟外壁は、ガラスを多用しています。特に今回DPGを採用しサッシュレスとしているので、配線、配管を隠す場所がありません。建築が多機能化すればするほど配線・配管が多くなりますので、どこかでそれらを収容する場所が必要となります。今回はそのために床下と天井裏を大いに利用することとなりました。
 ふたつ目は今後への布石ですが、空調設備に関する試みです。アルミは熱伝導率がよいのが特徴で、輻射冷暖房に向いた素材であるということができます。ということは、床下に冷気なり暖気なりを通せばそれだけで冷暖房になるのです。例えば、季節で温度変化の少ない地中の空気を床下に通せば、夏は涼しく冬は暖かい床が実現するのです。

 このように滋賀事業所事務所棟は自社の建築であるだけに、今後のアルミ建築、特にアルミ住宅に応用展開するために、さまざまな実験を行っています。これらの試みは、居住環境の向上と環境負荷の低減を両立させる仕組みといってよいでしょう。なるべく早く一般化させ、皆さまに供給できるよう、今後はその性能をデータとして収集していきたいと考えています。

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    廊下より隣接する工場内部を望む。

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    甲賀市近郊地図

物件名:SUS滋賀事業所
住 所:滋賀県甲賀市甲南町柑子2002番10
構 造:鉄骨造(工場棟)、アルミニウム合金造(事務棟)
敷地面積:12,384.21
建築面積:4,776.79 (工場エリア:4,192.50 事務エリア:584.28 )
施工期間:2007年9月~2008年3月